日本財団 図書館


 

は気にしなくていいよ」と何度も言ってくれました。「I enjoyed haven’t you」という感じで本当に気楽に世話をしてくれました。
こちらは何となく日本的なセンスで、こんなに一方的に親切にしてもらってお返しをしないと悪いのではないか、日本から何か品物を送ってもらった方がいいのではないかとか、いろいろな事を初めのうちは考えていましたが、「そうではなく、そのうちに今度は私が余力があったら、私が出来る事を私の周りの人にやってあげることで、彼女達に対するお返しになっていくのだ」というような考え方がだんだん判って参りました。
そして彼等達のようにリタイアした人達だけではなしに、現役でばりばり働いている人達でも、例えば週末の2時間だけ病院へ行き、入院して郵便局へ行けない人の手紙をポストに出してあげるとか、或いは買物に行けない人のために買物をしてあげるとか、ほんのちょっとした事なのですが、わざわざ誰かに頼むと大事で、看護婦さんや或いは行政のケースワーカーという人達に頼むほどのことでもないような隙間の仕事を沢山のボランティアの方達が気軽にやっています。
或いは入院するほどではない1人暮らしの人達に(アメリカでは1人暮らしで車の運転が出来ないと孤立する傾向がある)、1週間に1回程度、何処でも行きたい所にボランティアドライバーになって連れて行ってあげるというように、日常生活の中にボランティア活動が根付いており、誰でも当たり前の事としてやっているのです。
いろいろな生産方法があるようですが、例えばピーター・F・ドラッカー(米国の社会学者)などはおそらくアメリカのGNPの約1/10は、こうしたボランティア等による利益を第1の目的として追求しない団体・個人によって生産されているのではないかというような言い方をしております。
アメリカ人=大変お金に関心がある…金儲けをしようというようなイメージがありますが、そうではない世界をきちんと持っていないと社会の一員として評価をされません。これがきっとアメリカの草の根民主主義の一番健全なところで、大都市では麻薬・ドラッグ・銃だというようなアメリカの悪い面、病理というのは勿論ありますが、それ以上に「アメリカを支えているのは、こうした草の根のボランティアだなあ」という事を痛感したわけなのです。
●日本人の勤勉さは仕事のみ?
改めて私なりに整理をしてみますと、世の中にはいろいろな活動がありますが、お金を儲ける仕事、直接現金を儲ける仕事だけではなしに、例えば出世に役に立つとか、或いはお客さんの評判が良くなるとか…というような長期的には経済的な報酬に結びつく事が分かる仕事と、あまりお金や報酬に結びつかない仕事の2種類があるのではないかと思います。日本人というのは「勤勉だ」「働き過ぎだ」「ワーカーホリックだ」というような事をよく言われがちですが、それはお金に繋がる仕事の部分ではとても働き者で勤勉なのですが、どうもお金に直接結びつかないような仕事、上司に気に入られるような効果がもたらされない仕事、或いはお客さんの評判や信用を保つために必要だと思われないような仕事の部分では、随分怠け者なのではないか。「面倒くさい事はやりたくない、変なものに関わったら後が面倒だ」というような二面性を持ち、特に働いている方達は、仕事の面で

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION